イモビライザーはなぜ突破されるのか?仕組みと限界を解説
2026年1月1日
イモビライザーとは何か(定義)
イモビライザーとは、キーに埋め込まれた電子チップ(トランスポンダ)と車両側のECU(エンジン制御ユニット)が照合を行い、一致しない場合はエンジンが始動しない仕組みである。1990年代後半から普及が始まり、現在は新車のほぼすべてに標準搭載されている。
仕組みの概要
イモビライザーは以下の手順で動作する。
手順 | 内容 |
|---|---|
1. キー挿入/近接 | キーを挿入、またはスマートキーを車両が検知 |
2. 信号送信 | 車両側がキーのトランスポンダに信号を送る |
3. ID照合 | トランスポンダが固有IDを返し、車両側で照合 |
4. 始動許可/拒否 | IDが一致すればエンジン始動を許可、不一致なら拒否 |
世代による違い
イモビライザーには世代があり、認証方式の複雑さが異なる。
世代 | 特徴 | 脆弱性 |
|---|---|---|
第1世代(固定ID) | キーに固定IDを記録 | 複製ツールでIDコピーが可能 |
第2世代(ローリングコード) | 照合のたびにコードが変化 | 一部の車種で予測アルゴリズムが解析されている |
第3世代(暗号化認証) | 暗号化通信で照合 | 直接破るのは困難だが、CAN通信経由で迂回される |
暗号強度に関わらず、CAN通信経由で制御が乗っ取られると、イモビライザー自体が無効化される場合がある。
なぜイモビライザーは突破されるのか
イモビライザーが突破される原因は、主に3つに分類される。
1. CAN通信経由での制御乗っ取り
イモビライザーを含む車両の電子制御は、CAN通信(Controller Area Network)でつながっている。CANインベーダーと呼ばれる手口では、車両の配線(ヘッドライト裏、バンパー内など)に専用ツールを接続し、不正なコマンドを送信する。
これにより「正規のキーで認証済み」と偽装された信号がECUに送られ、イモビライザーを経由せずにエンジンが始動される。
2. キー情報の複製・クローン
古い世代のイモビライザーでは、キーのID情報を読み取り、ブランクキーに書き込む「キークローン」が可能である。正規ディーラーの診断ツールが悪用されるケースも報告されている。
3. ECU交換による無効化
車両からECUを取り外し、攻撃者が用意した別のECU(イモビライザー機能なし、または攻撃者のキーで登録済み)と交換する手口もある。物理的なアクセスと時間が必要だが、技術的には可能である。
突破されやすい条件
条件 | 理由 |
|---|---|
古い世代のイモビライザー | 暗号強度が低く、解析ツールが流通している |
CAN通信の配線がアクセスしやすい車種 | ヘッドライト裏やバンパー内が露出している |
OBDポートへのアクセスが可能 | 車内に侵入できればOBD経由で診断ツールを接続される |
純正セキュリティのみ | CAN通信経由で無効化されるリスクが高い |
よくある誤解
イモビライザーに対する誤解は、対策不足の原因になる。
誤解 | 正解 |
|---|---|
イモビライザー付きなら盗まれない | CAN通信経由で迂回されるため、これだけでは防げない |
スマートキーを持っていなければ始動しない | CANインベーダーはキーの電波を使わずに始動させる |
新しい車ほど安全 | 新しい車でもCAN通信は共通規格。突破手口も進化している |
電波遮断ポーチでイモビ突破も防げる | 電波遮断はリレーアタック対策。CAN経由の攻撃には無効 |
純正で十分 | 純正セキュリティはCAN通信と連携しており、乗っ取られると無効化される場合がある |
有効な対策/効かない対策
イモビライザーの限界を補うには、「CAN通信とは別系統の認証」または「物理的な障害」が有効である。
対策の有効性一覧
対策 | 有効性 | 理由 |
|---|---|---|
電波遮断ポーチ | ✕ | リレーアタック対策であり、CAN経由の攻撃には無効 |
OBDロック | △ | OBD以外の侵入経路(ヘッドライト裏等)には無効 |
ハンドルロック | △ | 犯行時間を延ばすが、切断されれば突破される |
タイヤロック | △ | 移動を遅らせるが、積載車には無効 |
CAN通信遮断装置 | ○ | 不正なコマンドを検知・遮断できる |
別系統の認証装置 | ○ | CAN経由の指示があっても、別の認証がなければ始動しない |
GPS追跡装置 | △ | 盗難防止ではなく発見支援。通信圏外では無効 |
なぜ「別系統」が有効なのか
純正イモビライザーを含む純正セキュリティは、CAN通信に依存している。CAN通信が乗っ取られると、純正セキュリティは「正規の操作」と誤認する。
これに対し、CAN通信とは独立した別系統の認証(Bluetooth認証、専用リモコン認証など)を追加すると、CAN経由の不正信号だけではエンジンが始動しない。
※ 車種によって侵入経路やリスクが異なるため、対策の有効性も車両ごとに確認が必要である。
CAR Controlの位置づけ(万能ではない)
CAR Controlは、CAN通信とは別系統の認証でエンジン始動をロックする方式である。ただし、すべてのリスクをカバーするわけではない。
できること/できないこと
できること | できないこと |
|---|---|
別系統認証によるエンジン始動ロック | レッカー・積載車での持ち去り防止 |
不正侵入時のアラーム・プッシュ通知 | 車内荒らし・部品盗難の防止 |
GPS追跡による位置特定 | 通信圏外(地下・山間部等)での追跡 |
移動履歴の記録 | 犯行を断念させる保証 |
条件と限界
- GPS追跡は4G通信を使用するため、通信圏外では位置情報が更新されない
- 積載車で運ばれた場合、エンジンロックは機能するが車両の移動自体は防げない
- 取り付けには専門業者による作業が必要(DIY不可)
- 車種によっては取り付けできない場合がある
どのような状況で有効か
状況 | CAR Controlの有効性 |
|---|---|
CAN経由でのエンジン始動 | ○ 有効(別系統認証がなければ始動しない) |
積載車での持ち去り | △ エンジンは止まるが移動は防げない |
通信圏外での追跡 | ✕ 位置情報が取得できない |
車内荒らし・部品盗難 | ✕ 対象外 |
有効な対策は、車種・駐車環境・想定リスクによって異なる。
自分の車・環境に当てはまるか判断に迷う場合
イモビライザーの突破リスクは、車種・世代・駐車環境によって異なる。
「自分の車がどの程度のリスクにあるか」「どの対策が有効か」を確認したい場合は、車種情報と駐車環境をもとに個別相談が可能。
